御社のサービスとユーザーが商いの中心となります。この関係性を、一歩引いた視点から捉えなおし、海外販売戦略策定へ活かす。

これを実施するベースとなるのが外部要因分析です。

外部要因として、御社とユーザーを取り巻く環境にある要因を取り上げていきます。この要因は次のようなものです。

  • 文化的・政治的要因
  • 経済状況
  • 競合状況

これらの要因は、外部、つまり自分たちの活動の外側にあるため制御することはできません。変えることはできませんが、外的な力により変化していきます。いったん見定めた後は、要因の変化がないかどうかアンテナを張っておく必要があります。

それぞれの要因についてもう少し細かく見ていきます。

政治・文化的要因

この複雑で多様な要因を捉えるため切り口の一例として、次の物があげられます。

「ユーザー」「保護政策」「規制」

ターゲット市場のユーザーは、当地の文化の担い手です。ユーザーの判断は長い歴史に裏付けられた価値観によりなされることが多くあります。積み上げられてできたものであり、外からの圧力などで容易に変わることはありません。例えばシャワーとお風呂。湯船につかる、しかも毎日、というのは日本の文化ですね。欧米のイメージはシャワーがお風呂の代わりという印象を持ちがちですが、国によって毎日浴びたり、一日に何度か浴びたりするなどが違います。もし、御社がバスタブを販売したいと思う場合、この文化的要因は把握しておく必要があります。

次の視点は保護政策、つまり、自国経済保護政策です。

国は基本的には自国の利益のために政策を打っていくものです。政治家が国民により選ばれている場合は、自国保護主義的な政策の方が国民の理解を得やすいのは想像に難くないと思います。(ただし、短期的には自国にとってマイナスに見えるが長期的にはプラスになるという場合もあるので、一見したところ違うように見えることもあります。)

御社の商品・サービスはターゲット市場にとってどの程度重要な産業なのかを確認しておくことにより、対象国が保護しようとしている産業かどうかを捉えやすくなります。

例えば農業。ある程度の農産物生産能力を持つ国なら、その生産能力は一定以上を維持しようとする政策が打たれています。農産物を生産できるようにしておく、農産物が自国経済に貢献できるようにしておくことが国としてメリットがあると考えているわけです。

そして、この自国経済保護の考え方を実施する際の方策として消費者保護関連規制や、環境規制、もしくは関税という制度が実効力を持っていると考えられます。

ここまで把握できた暁には、国にとっての外部要因、つまり国際関係の状況から先読みしていく足がかりを得ることができます。

経済状況

ターゲット市場のGDP等の経済指標が頭に浮かんでくると思います。状況把握の第一歩は経済指標ですが、その背景も考えておきたいところです。

ある国が特定の経済状況にある理由は、その産業構造にあることが多いです。さらに産業構造は地理的制約などによる生産物、流通構造などによって形作られています。

これらを見極めていくことが、GDPや可処分所得などの比較に加えて大切です。

例えば、アフリカの多くの国は、原材料算出国ですが、先進国と比べGDP等は低い状況に甘んじています。地理的には原材料を算出できるのに、付加価値を生み出せていない理由は原材料を買い付加価値を付けて販売しているのは産出国自身ではないからです。歴史的背景から欧米系の企業が根を下ろし現地で加工等しやすい状況があり、それがそのまま残っています。産出国自身には技術力や設備のための資金力がなく、現状を打破できません。

このコンテキストで、アフリカに中国が投資して港を作るというストーリーを考えてみましょう。中国は当該国では後発になりますが、資本を使い流通構造を変え、現状の商流を変えたいと考えているでしょう。アフリカとしては、欧米の傘下から抜け出す糸口が見つかりそうなら、中国にすがりたいのも理解できます。

経済指標を概観しつつ、その背景も含めた理解をし、先読みのヒントを得ておきましょう。

上記のアフリカの状況を考えると、今後アフリカでは御社の商品が売れる(今売っているならもっと売れる)でしょうか?

競合状況

競合状況というとまず一つには競合他社、それに加えて業界として競合になり得る他の業界や業態も視野に入れておきましょう。

御社が販売ターゲットとしている国において、競合他社はどのような活動をしていますか?すでに活動をしていればその活動内容を調べ、その状況から学べることは知恵とすることができます。まだ、活動をしていなければ、なぜしていないのかについて想像することにも異議があります。

さらに、競合と捉え得る他の業界についても見ておきます。

例えば御社が野球用品を販売しているとします。

ターゲット市場では市民レベルでも野球を楽しむ人が多い時、この競技者が増減する要因にはどんなものがあるでしょうか?例えば、サッカーのワールドカップで自国が優勝したら野球からサッカーに乗り換えることもあるでしょう。家族でキャンプに行くことが流行したら野球をする時間が減るかもしれません。携帯電話料金が大幅に下がったら野球用品にもう少しお金を落としてくれますか?

スポーツ・レジャーなどは競合としてとらえやすいので、イメージしやすいと思います。さらにここではより俯瞰して、関連性がない業界とのつながりも意識して考えます。

また、競合を特定する方法として、御社商品が提供するベネフィットを他の物で代替できてしまう可能性や、そもそも、ベネフィットの受け皿そのものが変わってしまう要因にも考えを巡らせる方法もあります。

例えば、洗濯機の販売を考える場合、ユーザーは自分が家で洗濯することがイメージしやすいです。さらにここでは、ユーザーのベネフィットが服をきれいにすること、であると考えると自分で洗濯機を買い自分で洗わずコインランドリーやクリーニングサービスが競合として見えてきます。また、そもそも洗う必要のない服、新しい繊維が出てくると洗濯機販売にはマイナスとなります。

ここではより広い視野で見ていくことで、将来の変化を察知しやすくなっていくと考えてください。

まとめ

外部環境については、自分が現在いる場所から見ているだけではとらえられないことがあります。御社のビジネスが属する業界の枠組みや、ユーザーセグメントを一旦取り払ってみてみることで、初めて見えてくるものもあります。

弊社では、別の視点から、違うところに立ち俯瞰するためのお手伝いもさせていただきますので、まずはご相談ください。